素直の向こうがわ
7.近づく距離
なんだか身体が重い。
一人の夕食を済ませたあたりから急激に身体がだるくなりだした。
テーブルの上の並んだお皿を見ても、ほとんど減っていない。そう言えば食欲もない。
この日もやっぱり父親は不在だった。
急患だとか、そもそも夜勤だとか、理由は違えど結局家にはいない。
父親は大学病院の救命救急センターに勤務しているから、仕方がないことだって理解している。
でも、父親はきっと分かっていない。
私の孤独な心の理由なんか、分かろうとしていない。
洗い物もそこそこに、すぐにベッドに入った。
部屋の気温は決して高くはない。それなのに自分の身体だけが異常に熱く感じる。
ベッドに入ってから気が付いた。薬と水、持ってきておけばよかった……。
これから身体を起こして一階まで取りにいく気力はなかった。
額に手を当てると、自分の手が熱いのか額が熱いのかもはや分からない。
これって、けっこう高熱なのかも……。
他人ごとのようにそんなことを思って瞼を閉じると、身体がベッドに沈み込んだ。
ここのところ、いろんなことが目まぐるしく起きて日頃ほとんど使っていない頭を使い過ぎていたからかもしれない。
荒くなる息で苦しい。
とにかく早く寝てしまおうと思った。