素直の向こうがわ
みんなきちんと席に座り、それぞれに参考書やら問題集と向き合っていた。
今のやり取りで自分の勉強を中断させられたのか、クラスメイトがこちらをうかがうようにちらちら見ていた。
でも、その時間すらもったいないと思ったのか、すぐに手元に視線を戻している。
そう言えば、私たち受験生だったっけ。
高3に進級してから初めての自習の時間だった。
自習イコール遊ぶ――。そんな方程式が成り立つ時代は終わったらしい。
しんと静まりかえった教室の中で、私は仕方なく腰を下ろす。
まがりなりにも都立のトップ進学校。
みんな勉強していて当たり前だ。
そんなこと、すっかり忘れていた。
勉強するなんてこと、高校に入ってからずっと忘れていた。