素直の向こうがわ


浮き足立ってしまう心を抑えられないまま教室へと戻って来た。

さっき、中庭でもらった髪留めを早速してみた。

河野、気付いてくれるかな……。そんなことを思いながら自分の席に戻る。


河野が行ってしまったので早めに戻って来た教室は、まだお昼を食べているクラスメイトたちが大半だった。

そこにドタバタと騒がしい足音が近付いて来た。


誰だろ、騒々しい。


その足音の方を見てみたら血相を変えた真里菜だった。


「真里菜、どうしたの――」

「河野が、大変」


私の呑気な声に被せるように息も絶え絶えに言った。


「何よ、騒がしいな」


薫も真里菜に気付いてこちらへと来る。


「河野? 河野がどうしたの?」


私は訳が分からなくて真里菜を見上げた。


「河野が、山下を殴って今職員室に呼ばれてるらしい」

「……え? 何、言って……」


そんな話信じられるわけもない。笑ってあしらいたいのに、心はざわめき出して身体が勝手に動き出した。

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