素直の向こうがわ
8.消せないモノ
日が落ちるのも早くなった。
気が付けば外はもう夕闇だ。
誰もいなくなった教室でじっと待っていた。
この待ち続ける時間が永遠にも感じる。
廊下から零れる明かりが教室にも差し込んで来るけれど、それが余計に暗くなったことを際立たせている。
自分の席に座り手の上に額を載せる。
激しい鼓動はいつまでたっても収まらない。
「河野が戻ってくるまで、私たちも一緒に待ってるよ」
真里菜と薫がそう言ってくれたけれど、それは断った。
二人の心底心配そうな顔を思い出す。
昼休み、教室を飛び出して行った真里菜が気まずそうに戻って来た。
「真里菜! どうだって? 河野、どういうことだったの?」
私は掴みかかるように真里菜のもとに駆け寄った。
「うん……」
強く見つめる私から顔を逸らし、視線を彷徨わせて薫の方へと助けを求めていた。
「ねえ! いいからちゃんと言って。本当のこと言ってよ!」
私はもう半分泣いてしまいそうで、不安でどうにかなりそうだった。
そんな私に真里菜と薫が顔を見合わせ、諦めたように話し出した。