意地っ張りの涙(仮)
そんな私に何も言わず凌平に声を掛ける夏目。

「よう、凌平も朝から楽しそうだな」
「楽しいわけねぇよ。頭を叩かれたんだぜ?!」

叩かれた頭を撫でつつ夏目に慰めてもらおうとしている凌平の姿が目に入ってきた。

「凌平みたいに…素直になりたいか?」

ハッとして前を向くと里緒菜が私を見ていた。

「……うん」と短く返して、夏目と凌平を見る。

「あたしには可愛い茜なんだけどな?」
「里緒菜は特別だから。何でも話せる親友だもん」

素直な気持ちを里緒菜に笑いかけながら伝える。夏目にも里緒菜と接するように、せめて凌平と接するように笑い合えるようにしたい。

夏目は私に話しかけてくれてるんだから。
後は、私次第なんだけど……。


私は、ハァーと少し深めのため息をつき机に顔を伏せる。
私を見つめる夏目を里緒菜が見ているなんて気がつかなかった。


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