意地っ張りの涙(仮)
しばらく何も考えずに作業を続ける。
ガラリとドアが開く音が聞こえてそちらを見る。

「…もう戻ってきてたのか、柊」

入ってきてたのは夏目だった。確認するとすぐに私は作業を再開した。

「結城先生が戻ったら渡しておくから…先に帰っていいよ」

私の声は聞こえていたはずなのに返事がない。まぁいいかと気にすることなく作業をする。

もう少しで終わりそうだと思った時に近づく足音。

「何か用なの?」

声を掛けると私の後ろで止まった足音。

「柊は何で俺を見て話をしないんだよ?」

気にしていないと思っていたけど、気になってたのか…。

「……そんなことないよ、気のせいでしょ?」

後ろを振り向くことなくそっけなく返して作業の続きをしているふりをする。

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