意地っ張りの涙(仮)
それでも後ろから動く気配はしなくて。
なんで急に聞いてきたんだろうか?

「気のせいなわけないだろ?俺の方みないじゃないか、今も話しかけてるのに振り返らない」

確かに振り返れてない。夏目を見て話したいのに…どうしても目を逸らしてしまうから。
現にこうして話していても緊張している私がいる。

「俺と目があってもすぐに逸らすだろう?……【あのとき】のことで気まずいのはわかるよ。でも、また柊と顔を見て話したいんだよ、俺は」

夏目の気持ちがちゃんと伝わってくる。
私も夏目とちゃんと話したい…。

「……わかった。顔見て話すようにするから、ちょっと後ろから離れてよ」

やっぱり言い方が自分でも可愛くないと思う。フゥッとため息をつくと不意に肩に手を置かれた。そのまま私の体はクルリと反転させられて…夏目と対面する形になった。

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