意地っ張りの涙(仮)
言われてみれば確かにそのほうが早いかも…。後ろを確認すれば里緒菜は「夏目、てめぇ!!」とか怒って女の子の発言じゃないし、凌平も「待ってくれよ~!」と情けない声をあげていた。ついクスッと笑ってしまったが……でもこの手は要らないんじゃないのかな?
私は繋いでいる手を見ながら夏目に聞く。

「ーー二人を来させる為なら別にこの手は……いらないんじゃ…」

徐々に小さくなる私の言葉に夏目は笑って

「待ち合わせしてたのになんでか俺、放って行かれそうになるし?まぁ、その詫びと遅刻しないように二人を動かしてるんだ。役得が欲しいだろ」

そう私を優しく見ながらの言葉に頬が熱くなって…。下を向きながらやっぱり私の声は小さくなって

「…バカじゃないの?私の手で役得とかあるわけないし」

可愛くない言葉が出てしまったのに、夏目は、

「い~や、俺が嬉しいんだから良いだろ?」

本当に嬉しそうに言うから

「やっぱりバカ……」

少しだけ私も小さく笑って手を繋いで歩く。
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