意地っ張りの涙(仮)
そんな顔を見せたくはないから強がってしまう私。

「べ…つに何もしてないからね!」

「ハイハイ。ちゃんと解ってるよ」

ポンポンと私の頭を優しく叩きながら笑ってくれる。
ーーーいつからこんなに夏目は大人になってたんだろう?
キュッと胸が苦しくなった気がした。

私は、意地張ってばかりで夏目をきちんと見ることが出来ていなかったのかもしれない。

「ほら、瀬野も凌平も待ってるはずだ。急ごう」

私に声を掛けて歩き出す夏目について後ろを歩いていく。一定の距離を保ったまま……。

(さっき、きちんと伝えようって決めたじゃない)

グッと右手を握りしめて胸のところへ持っていく。少しずつ距離を縮めて夏目の隣へ並んで歩く。

「言いたいことあるから聞いて。……さっきは転けそうになったの助けてくれたのと待っててくれたこと【ありがとう】。それから、嫌な態度とって【ごめんなさい】。ーーそれだけ!」

最後は、余りにも恥ずかしくなってしまって投げやりになってしまったけど伝えた。とにかく隣を見ることができない。夏目より先に行こうと足を速めようとしたけど無理だった。
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