意地っ張りの涙(仮)
「柊さんは皆に好かれてるんだな」

その言葉と【バチンッ】と何かを叩く音が同時に響く。

「えっ…?」

突然過ぎて身動きが取れずにいると里緒菜の怒声が聞こえた。

「結城先生…?女生徒に触るなんて何考えるんですか!」

見れば、般若になった里緒菜が結城先生を見下ろしていた。結城先生はといえば赤くなった手を撫でながら

「特に何も。元気のない生徒を励ましていただけだろ?」

ういんくまで飛び出しそうな程に悪びれることなく里緒菜に返せば

「茜に触っておきながら…!」

里緒菜の苛立ちが頂点になると思った時、私はベンチから立ち上がり宥めようと動いた。だけどグイッと手首を取られ体勢を崩したが、すぐに抱き留められた。

「悪い…強く引っ張りすぎた」

引っ張ったのはどうやら夏目だったようだ。

「何で引っ張るのよ!?」

軽い手首の痛みと抱き留められたことに対する照れで反射的に夏目を睨んでしまった。
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