恋トレ～この恋お手柔らかに～
「え？……もしかしてだけど、犬を飼うことがどういうことか考えず、単に
失恋の痛手を癒してもらいたくて……飼うことになった…の？」

顔を歪ませ私の顔を覗き込むように北嶋さんは確認した。

「そ…そういうことに…なりますね」

なんか自分の飼った動機の甘さを指摘されているように思えて背中を丸めてる。

でも、犬を飼う動機なんて人それぞれだとも思う。

なんとなく納得できない気持ちで北嶋さんの言葉を待つ。

北嶋さんは、フッと吐き捨てるようにため息を出すと

さっきまでのさわやかさから鋭い目つきに変わった。

「あのさ、犬に癒しを求めるなんて馬鹿じゃないの？」

「え？ば、ばか？」

予想外の言葉に私は固まる。

「ハチくんは幼犬だよね。人間でいうとまだ幼稚園児ぐらいだ。
そんな小さな子に癒されるわけがない。犬と人間の信頼関係が成り立ってこそ
癒されると思うけどね」

北嶋さんの言っていることは正論で反論できない。

でも初対面の人にいきなり馬鹿って言われてはいそうですねなんて言えるわけない。

「北嶋さんのおっしゃることはわかります。ですが『馬鹿』はないんじゃないですか？」

イケメンだから何を言っても許されるなんておもうな～～！！っと心の中で叫ぶ。

「でも、そういう甘い考えだから、初心者向けじゃないミニピンを選んで
躾ができないって泣きついてんだろう？」

北嶋さんは腕組みしながらかなり上から目線。

「あなたに私の気持なんかわかってたまりますか！どんな理由で
　犬を飼おうが勝手でしょ」

すると北嶋さんの目がより鋭くなった。

「あんたみたいな安易な考えの飼い主がいるから犬が捨てられたり、里親に出されたりするんだ！」

北嶋さんが声を荒げた。
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