恋トレ~この恋お手柔らかに~
あんなに啖呵を切ったのに軽くスルーされるは、北嶋さんのペースに飲み込まれるように

従ってる自分が情けなく感じる。

私がゆっくりと手をさしだすと北嶋さんは私の手にボーロを数粒乗せる。

「これ使って今俺がやったみたいにやってみな」

「・・・はい」

私は小さく息を吐きながら、モヤモヤした気持ちをリセットさせた。

そしてパンダのおもちゃで遊んでいるハチに近づくとしゃがみ

北嶋さんのやったようにおやつを使いながらやってみると

おやつにつられてだけど一発でお座りが出来た。

嬉しくて北嶋さんの見るともう一回と人差し指を出した。

私はもう一度同じようにおすわりを言った。

するとハチはまた、すんなりとおすわりをした。

「ハチ~~偉いね。おすわり出来たね」

私はハチをいっぱい褒めてあげた。そしてお礼をしようと北嶋さんの

方を見ようとするとまるで犬を褒めるように北嶋さんが私の頭をワシャワシャしながら

「よしよし、麻衣もよく出来たな」とニヤリと笑った。

い、今名前で呼んだ?

しかも扱いがハチと同じ?

私はくしゃくしゃになった髪の毛を両手で整えながら立ち上がり

名前で呼ばないでほしいと言おうとしたが、

北嶋さんがファイルを取り出し書き込んでいる姿がかっこよすぎて

何も言えなかった。

・・・・・・って私何ときめいてんのよ。

一目惚れ撤回したばかりなのに、ちょっとした仕草にときめいてどうすんの?
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