雨のち虹 ~カタツムリの恋~
ゆかりの目を見れば、わかってしまう。
ゆかりが彼を好きなこと。
そして、彼はゆかりの彼氏ではないということ。
『紹介して』
軽く吐いた言葉は、本当はちっとも軽くなく、不安で涙が出そうになるくらい勇気のいる言葉。
「いいよ・・・」
ゆかりは、心の中を隠して頷いた。
新垣先生をあきらめるなら、紹介してあげてもいい・・・と、ゆかりが言った。
敵わない。
ゆかりと直の友情は特別なんだ。
私には全てわかってしまった。
私の存在が、直を苦しめていること。
私が新垣を追いかけることで、直は悲しい想いをしていること。
ゆかりは、直を守る為・・・自分の恋を捨てた。
私には、そんな友達いない。
自分を犠牲にしてもいいくらい大事な友達もいない。
私の為に何かを犠牲にしてくれる友達もいない。
涙が溢れて、顔を上に向けた。
とても濃い色の三日月が私を見て、笑っているようだった。
雲の動きが、あまりにも速くて、私のドキドキも増して行く。
「暇つぶしに狙っちゃおっかな・・・」
いつからか、軽薄で嫌な女を演じることに慣れていた。
冷たい視線すら、心に刺さらなくなっていた。