雨のち虹 ~カタツムリの恋~
龍は、覚えていた。
あの日、タイヤ交換に入った店の愛想の悪い店員が私だってこと。
私が覚えていないと思って、黙っていたんだって。
私達似てるね・・・って、言いながら、その場でパーカーに着替えた。
派手すぎて、恥ずかしくて、お互いの姿を見て大笑いした。
「これ、パジャマにしようか」
「そうだね・・・でも、今日だけはこのまま着ていようね」
高いビルとビルの間から見えた空には、天から降りてきたような一筋の光が見えた。
雨が降ったあとの、懐かしい匂い。
乾いた道路が、人の足でまた濡れてゆく。
たくさん雨が降ったね。
私にも龍にも
いっぱい大雨が降った。
嵐も来た。
台風も来たし、雪も降った。
この雨は一生止まないじゃないかって思った夜もあったね。
でもね・・・
「ほら!!見ろよ、あれ!」
大好きな人が指差す先に見えたのは
綺麗な虹・・・
頑張ろうね。
龍、これから2人で頑張ろう。
殻を捨てられる日がきっと来る。
最初はドキドキして、2人して恥ずかしい顔をしちゃうかも知れない。
だんだん、殻のない生活に慣れて、いつかは殻をかぶっていたことさえ忘れるだろう。
でも、忘れちゃいけないことがたくさんある。
自分が傷つけた人や
後悔や、反省や・・・
辛いときに
助けてくれた人のこと。
「綺麗だね・・・」
「うん。忘れんなよ!」
高層ビルの間から
こっそり顔を出した七色の虹。
2人だけにしか見えない幸せへの橋・・・
~END~