雨のち虹 ~カタツムリの恋~
ゆかりから返してもらったタオルを俺は使えなかった。
これが『恋』かどうか誰か教えてくれ。
枕元に置いたタオルが
いつも俺に話しかけるようだった。
親父が酒を飲んだ日は、俺はひとりで部屋にいた。
ひとりぼっちの部屋なのに
寂しくないのは
そのタオルのおかげかも知れない。
電気もつけずに部屋で過ごす時間は、なぜかとても心が落ち着いた。
やっぱ、このままじゃだめだ。
後悔する。
もう一度ぶつかってみよう。
俺は、暗い部屋の中からほんの少し見える月と、ゆかりに貸したタオルに勇気をもらった。