雨のち虹 ~カタツムリの恋~

ゆかりから返してもらったタオルを俺は使えなかった。



これが『恋』かどうか誰か教えてくれ。





枕元に置いたタオルが


いつも俺に話しかけるようだった。




親父が酒を飲んだ日は、俺はひとりで部屋にいた。




ひとりぼっちの部屋なのに


寂しくないのは


そのタオルのおかげかも知れない。




電気もつけずに部屋で過ごす時間は、なぜかとても心が落ち着いた。




やっぱ、このままじゃだめだ。


後悔する。






もう一度ぶつかってみよう。




俺は、暗い部屋の中からほんの少し見える月と、ゆかりに貸したタオルに勇気をもらった。


< 49 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop