雨のち虹 ~カタツムリの恋~
待ち合わせの場所には、わざと遅れて行く。
来るか来ないかわからない人を待つのはものすごく精神的に辛い。
俺は待つのが苦手。
だけど、いつも待つのは俺。
そういう運命なんだ。
だって…
俺を待つ人がいないから。
俺を信じて
俺を待ってくれる人がこの世のどこかにいるのなら
神様、どうか早く出会わせてください。
みんながもう帰った頃、俺はやっと教室を出た。
長い廊下をゆっくりと歩きながら、またあの記憶が甦る。
ガッシャ―ン…って音。
俺の投げた椅子が、まるでおもちゃのようにコロコロと転がった。
まだ体の小さかった俺にとっては、結構重かった椅子。
むしゃくしゃした気持ちは今もこれからも消えることはない。
誰かに救ってほしいと願う気持ちも
日に日に大きくなる。
ゆかりに惹かれたのは、俺と正反対だからかな。
俺には真似できないような笑顔。
俺には一生かかっても無理な、ゆかりの無邪気な笑顔が俺の心に風を吹き込んだ。