雨のち虹 ~カタツムリの恋~
キス
中学三年生の夏休みだった。
「龍、これ見てよ!」
神社の公園でありの行列を見つけて喜んでいるゆかり。
公園は、夏だというのにひっそりとしていて涼しかった。
不規則な形をした石でできた階段に腰を下ろす。
夏休みは、ほぼ毎日ここに来ていた。
受験勉強や、宿題に追われる日々の休憩時間。
神社の階段を覆う深緑の木々の葉。
太陽からの光を遮断するその大きな木のおかげで、夏の暑さから逃れられる場所。
他愛もない話をして、日頃のストレスを発散して、また家に戻る。
そんな夏のある日。
ありの行列に持っていたお菓子のかけらをあげて、はしゃぐゆかりを…
抱きしめた。
ざわざわ・・・
俺の心の中と同じ音がした。
風に揺れる森が激しく音を立てて、俺の鼓動を速くした。