雨のち虹 ~カタツムリの恋~


バイト先の、店長だった。


短期のバイトで、配達の手配をする仕事をしていた。


段ボールだらけの事務所は、男臭くて、薄暗い。


真っ白い壁がタバコの煙のせいで、茶色く変色していた。

壁にかけられた時計は、10分も進んでいた。

店長が言った。



「遅刻が多いから、時計を進めているんだ」



ばっかじゃない?


進んでることがわかっている時計を見ても、誰もそれを信じないよ。


信じないどころか、

それを『時計』だとは思わなくなるよ。



そのうち、誰も見なくなるよ…



かわいそうな壁掛け時計を見ていると、自分を見ているような気持ちになった。


大人ぶって、背伸びしている自分。


誰からも本気で愛されない私…





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