雨のち虹 ~カタツムリの恋~
そう思った瞬間、
ベランダから10メートルも離れていない場所に立つ私を新垣が見た…ような気がした。
やばい。
ばれた…?
ちらっと見たあと、新垣は何事もなかったかのように洗濯物を部屋の中へ投げ入れた。
そして、思い出したかのようにもう一度こっちをじっと見た。
「里田ぁ??」
ベランダの柵に体を乗り出して、新垣は私の名を呼んだ。
こういう人なんだ。
ここで先生の部屋を見ているような怖い生徒を、
ほっておくことができない奴。
新垣のおかげで、男も捨てたもんじゃないと思えるようになったんだ。
まだ、実際、新垣以外にそういう男には出会ってはいないけれど…
「おい!!何やってんだぁ?もう夜だぞ!!」
新垣は、あまりの静けさにだんだん声のトーンを落とした。
「ごめんなさい、帰ります。」
そう言って、走り出した私の背後から聞こえた声…
「気をつけろ!!送らなくて大丈夫か?」
低くて、かっこいい声で…
学校での声とは少し違う声。
新垣のば~か。
先生は、純粋な心を持った大人だね。
私ストーカーだよ?