雨のち虹 ~カタツムリの恋~
ベランダに干された白いジャージ。
ベージュの柵。
新垣の部屋のカーテンが揺れるたびに
私の胸はおかしな音を立てる。
心の中で謝りながら…
だめだって分かってるのに、どうしてもここへ来てしまう自分が
大嫌い。
もう
新垣を裏切りたくないって思ったのに。
もうここには来ないって決めたのに。
悲しいことがあったからってそれは言い訳にはならない。
悲しいことも寂しいことも、みんな抱えてる。
私だけが特別不幸なわけじゃない。
傘を差さなくてもいいくらいの霧雨が心地よくて、ずっとこのまま時が止まればいいのにと、思った。
ここにいるときの、私の心の中って…
朝焼けの海のような、とても静かで透明で…
ここに来てしまう自分は嫌いだけど、
ここにいる時の私は、一番私でいられるんだ。