雨のち虹 ~カタツムリの恋~
そつぎょう
卒業が近くなると、喧嘩ばかりした。
きっと俺自身に原因がある。
俺が怖かった。
ゆかりと離れること。
ゆかりから別れを切り出されることが…
何度も予行演習を頭の中でしていたのに、実際その場面になると俺はちゃんと頷けるのだろうか。
卒業式前日のことだった。
いつものように手を繋いで歩いている時だった。
すれ違う高校生カップルを見て、ゆかりが言った。
「いいなぁ、あんな風になれるかな?」
ゆかりは悪くない。
絶対に心からの言葉だったと思う。
ゆかりは俺をちゃんと愛してくれていた。
貧乏でも、不良でも、部屋が汚くても・・・
俺を愛し続けようとしてくれていた。
俺は言った。
「無理に決まってんじゃん・・・俺、高校違うし、ばかだし…」
ゆかりは、握っていた手を離し、下を向いて泣き出した。
ごめんな。
こんな俺を許してくれ。
お前には俺は似合わない。
お前にはもっと優しい男がいいんだよ。
俺の口調が怖いと、喧嘩のたびに言ってたな。
ごめんな。
優しくできなくて…
どうも、苦手なんだ。
自分に自信がないだけなんだよ。
怖くて、
また殻の中に閉じこもってしまった俺…