雨のち虹 ~カタツムリの恋~
「ちょっと!姉ちゃん!!タイヤ交換頼むよ!」
少し似た声の人が来るたびに、ドキドキしちゃう。
小太りの作業服を来たおじさんだった。
黄緑色のダサい作業服と、私の黄色い作業服・・・
どっちもダサくて、笑える。
手際良く、タイヤ交換の手続きをする私に
おじさんは言った。
「姉ちゃん、大変だなぁ!かわいいのに・・・ まぁ、頑張れよ!」
黄緑の作業服のポケットから200円・・・
私の手に無理やり握らせた。
「たまには休憩しなよ!これで何か飲みなさい。釣りはいらね~から!」
生温い200円を私は自分のポケットに入れた。
世の中捨てたもんじゃない。
良い人もいる。
優しい大人もいる。
優しい男だっている。
私をトンネルの向こうから呼んでくれる人がきっといる。
トンネルの向こうから走ってきて、私の手を引っ張ってくれる人もいるはず。
カタツムリだから
暗闇でも、自分の進む道はちゃんとわかる。
見えなくても
直感で、見つけてみせる。
油の匂いのするこの店で
今はとにかく働くしかない。