うちの社長はバカだ

五十嵐莉乃

- 生徒指導室 -


「合格おめでとう、柊。お前なら合格すると思ってたぞ」


そう言ったのは、笑顔でコーラを飲みながら言う山吹千春。

普通生徒の前でコーラ飲むか、というツッコミは置いておこう。

それよりも俺は落ち込んでいる。
不覚にも会社に受かってしまったということに。もう後戻りすることは出来ない。


「いえ、山吹先生のお陰ですよ。ありがとうございます。ところで、聞きたいことがあるのですが」


俺は笑顔で先生に思ってもいないことを言いながら、本題へと入る。


「おー、そうだろうそうだろう。
なんだ、何でも聞いていいぜ」


俺の言葉に気が良くなったのか、嬉しそうに話す。


「先生は、五十嵐さんと昔からのお知り合いなんですか？」


そう、俺が今日ここに来たのは合格したことを報告しに来たのと、彼女、五十嵐莉乃について詳しく聞きに来た。

今から一緒に働いていく上司のことを出来るだけ知っておきたいと思ったからだ。


「あー、莉乃か？...そうだ、幼馴染みなんだよ。だから、莉乃のことなら何でも知ってるぜ。なんか知りたいことでもあんのか？」


確かに下の名前で呼び合うのだから、相当仲が良いとは思っていたが、幼馴染みだったとは。


「そうなんですか！...そうですね、五十嵐さんのこと何も知らないものですから、何から聞いたらいいのやら」


驚いたフリをしたのち、笑顔に変わりながら話す。
山吹はそんな俺を見て「仕方ないなぁ」と笑顔で語り始めた。


五十嵐莉乃という、女性について。
< 4 / 10 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop