うちの社長はバカだ
卒業してからどれくらい経っただろうか

どれくらい経ったか分からないくらい俺は遊んでいた

家で何もせず1日過ごしたり、友人と思いっきり遊びに行ったり

楽しい日々を過ごしている

そして、今日は俺の家に友人を呼んで世間話をしている


「楓さ、モテるのに何で彼女作んねーの?」


「いや、モテねーし、いらねー。つうか篤(あつ)の方がモテるだろ」


「お前本気で言ってんだったら、割と本気でキレるぞ」


篤と呼ばれた人物は、坂下 篤(さかした あつ)同じ高校だった同級生で、休みが終わったら大学に通う、俺の友人一号だ

三年前に、山吹先生の知人が自営業を始めると教えてくれたのがこの友人一号篤だ

良く周りを見ていて、気を回せて凄く、人間的にとても好きなやつ


篤は、溜め息をついた後言葉を続けた


「まあ、いいや。そういえば今度勤める所の会社の社長さん美人なんだろ?例え性格に問題があるとしても。恋に発展すんじゃねーの?」


篤はニヤニヤしながら俺を見つめる

五十嵐さんの性格の凄さを伝えたにも関わらず、そのように思える篤が凄い


「ねーって。五十嵐さんの事深く知ってないとはいえ、恋には絶対発展しねーわ」


俺は溜め息とともに、両手を曲げ、掌を広げて大きく首をふる

その様子を見て篤は、「ふーん」と疑いの目を向けている


ー美人とはいえ、俺は普通の性格の人と付き合いたい


そう内心で思いながら篤との世間話は尽きることがなく、ひたすらに話し続けた

傍から見ると女子か!とツッコミたくなる程話し続けていた

そんなにも話すことがあるのかと思うが、ゲームの話やアニメの話。同級生の話からネタは尽きることを知らない

そもそも一つの話で大きく話題が膨れ上がるため、中々話題が変わらない


「でさ、楓は今期のアニメ何観てる?」


「月曜は、ラブっ子と勇者の小道と、あとはなんだろ」


「引き算は観てねーの?」


「あっ、観てる観てる!内容気になり過ぎる終わり方だったよな」


と、またここから暫く話は続く

お互い、見た目はアウトドア派の人間に見えるが、実際は根っからのヲタクでインドアな人間だ

フィギュアとか、ポスターを部屋に貼ったりするタイプではないが、見る専門といったようなヲタクだ


「引き算さ、主人公超格好良くね!?楓もそう思うだろ!」


「俺的に脇役の鯖が格好良いと思うな。...あっ、もう19時か。篤、飯食ってくか?」


「うおっ、まじか!時間過ぎんの早すぎだろ!あー、いや、おふくろに飯食うって言ってるから帰るわ。」


篤は眉を下げながらゆっくりと立ち上がった。俺も立ち上がり、玄関まで篤を見送る


「会社、無理し過ぎずにな。何かあったら連絡しろよ」


篤は俺の肩に手をポンッと置き、微笑んでそう言った


「おう、さんきゅ。お前もな」


俺も釣られて笑顔になった

篤は俺から手を離して「さんきゅー、友よ!じゃ、お邪魔しましたー」と言い、帰っていった


「本当に、いいやつ過ぎて怖いわ」


ヘラヘラと笑いながら俺はリビングに行き、母が夕飯の支度をしてるのの邪魔にならない程度に手伝いをし始めた


ーいよいよ、明日入社か


不安と、緊張と、少しのわくわく感と、色んな気持ちが入り混じっていてた




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