偽王子と嘘少女
「柊…?」
「何が『俺のもの』よ! 格好つけたいだけなら、他の子にして!」
涙ながらに、柊は告げた。
そのまま俺の体を突き飛ばして、逃げるように帰ってしまった。
残された俺は、ただただ訳が分からないまま。
なんで。
ナンパされていたんじゃ…。
もしかしたら何か誤解をしていたのかもしれない、と過去を振り返る。
そういえば、柊はあの男と話しているとき、確かに緊張していたが、同じくらいに顔を赤らめていた気がする。
ということは、あいつが紫水?
すなわち、柊の好きな人…。
このときの俺は、とんでもないことをしてしまったと、激しく後悔したのだった。