偽王子と嘘少女
大きく深呼吸をして、心を整える。
紫水くんが教室から出てくるのを確認し、彼の姿を追うように同じ方向へと歩く。
「どこか行きたいところある?」
声をかけるタイミングを伺っていると、紫水くんが言葉を紡ぐ。
もしかして、私に言ってくれているのだろうか。
私の存在に気付いてる?
不思議に思って彼の綺麗すぎる顔に目線を持ってくると、そのどこまでも澄んだ瞳が向けられていたのは私ではなかったことに気付く。
隣に…女の子がいた。
紫水くんと同じTシャツを着ているその子は、仲が良さそうに楽しく話している。