偽王子と嘘少女
「あれ…適当に歩いてたら、入口に来ちゃった」
希子の声で周りを見渡すと、そこは大きな校舎を見上げてため息をついた場所。
つまり、戻ってきてしまったということだ。
「どうする? この際、帰っちゃう?」
希子は、私に気を遣ってくれているらしい。
その優しさに答えないわけにもいかず、頷いておくことにした。
「…本当、今日はごめんね。こんなはずじゃなかったんだけど」
うつむきながら、思いに任せて声に出す。
「いいって。誰だって、好きな人が自分以外の誰かと楽しそうにしているのを見たら、悲しくなるもんでしょ」
いつものように、希子は笑い飛ばした。