偽王子と嘘少女


「なにそれ…」


どうして今、そんなことするのかな。


きっと私が紫水くんのせいでブルーの気持ちになっているっていうことを知らないから、出来るんだ。


本当、空気読めないやつ。


私がいじめられないように、なんて言うし、やめてよ。


格好良いのはキャラなんでしょ?


設定なんでしょ?


「もう…藤堂くんの、馬鹿」


「え…嫌、だったか? 悪い、勝手に。ああ、どうしよう…本当、ごめん」


「ううん、嫌なわけないじゃん」


怒りも、悲しみも。


その精いっぱいの不器用な努力で、全てなくなる。


『紫水くん』と、新たに連絡先を追加されたスマートフォンを握り締めながら、静かに微笑んだ。


< 141 / 273 >

この作品をシェア

pagetop