偽王子と嘘少女
「なにそれ…」
どうして今、そんなことするのかな。
きっと私が紫水くんのせいでブルーの気持ちになっているっていうことを知らないから、出来るんだ。
本当、空気読めないやつ。
私がいじめられないように、なんて言うし、やめてよ。
格好良いのはキャラなんでしょ?
設定なんでしょ?
「もう…藤堂くんの、馬鹿」
「え…嫌、だったか? 悪い、勝手に。ああ、どうしよう…本当、ごめん」
「ううん、嫌なわけないじゃん」
怒りも、悲しみも。
その精いっぱいの不器用な努力で、全てなくなる。
『紫水くん』と、新たに連絡先を追加されたスマートフォンを握り締めながら、静かに微笑んだ。