偽王子と嘘少女
「おはよ、かぐや」
教室に入ってきた途端、不意に後ろから声をかけられる。
もしかして、希子!?
「…あ! あのね、希子! 昨日のことなんだけ…」
言いながら振り返ると、そこにいたのは希子ではなかった。
「そ、園川さん」
「じゃないでしょ、雅って呼んでくれるんじゃなかったの?」
「あ、そうだったね。雅、おはよう」
希子しか考えられなくて、園川さんのことなんて頭になかった。
ましてや、下の名前で呼ぶことを約束していたことを覚えているはずもない。
「そういえば、希子は?」
机に座り、私は隣の席へ座る雅に聞いた。
いつも同じくらいの時間に登校してくる希子が、今日に限って数分待っても来ないのだ。