偽王子と嘘少女
「行ってきな。私はかぐやにひどいことをしたんだから、止められる権利ないよ」
笑顔でチラチラと手を振っている。
「ありがとう! じゃあね!」
振り返らないで、ただ前だけを見て進む。
遅刻ギリギリの生徒たちの波にも逆らって。
「柊…?」
下駄箱まで来たとき、藤堂くんが私の名を呼んだ。
「どうしたの、もうチャイム鳴るよ」
尋ねると、藤堂くんは忠告を無視して、ゆっくりと靴を取り出した。
「…さっき、芹澤に会った」
「えっ、希子に!?」
「学校へ来ようか、迷っている感じで。その間も、ずっと俯いてたけど…」
やっぱり、昨日のこと気にしてるんだ…。