偽王子と嘘少女


「行くんでしょ、彼女のところ。頑張ってね」


何気ないエールの中にも、彼…藤堂くんなりの優しさがある。


柔らかいその言葉には、偽りじゃない本当の思いが込められていた。


「ありがとう…私、頑張るから」


ただの秘密共有者。


いつかの私は、藤堂くんに対してそんな風に思っていた。


その事実は今も変わらないけど、彼の存在に信頼を寄せ、嬉しく思う私がいるんだ。


ねえ、希子。


本当の思い、教えて。


こんな私だけど、これからもずっと友だちでいたいから。


希子にだけは、嫌われたくないから。


そのためにどうすればいいか、ちゃんと考えたいんだ。


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