偽王子と嘘少女
…でも、だからだよ。
ちゃんと、話し合いたいって思ったんだ。
「今日は、希子に話があって来たの。だからそれを聞いてもらえるまで、私は帰らないって決めた。雅や藤堂くんとも、約束してきちゃったからね」
「……話」
希子が大切だから、また笑い合いたいから。
「そっか、分かったよ。外じゃなんだから、とりあえず家ん中入って?」
やっと思いが伝わったよう。
私は希子の後ろをついて行きながら、昔のことを考えていた。
私が紫水くんの隣の席になったとき。
初めて紫水くんと話したとき。
紫水くんの笑顔を追いかけていたとき。
バレンタインデーで、紫水くんのために作ったチョコレートを渡せなかったとき。
紫水くんが好きだったこの数年間ずっと。
希子は、私の隣でどんなふうに景色を見ていたのだろう。