偽王子と嘘少女
「だめ、か?」
「…紫水くんに会いたい」
なんとなく声に出ていたその言葉を、聞き取り、反応したやつが1人いた。
「そんなに会いたいなら、会えばいいだろ」
藤堂くんである。
そう、今は掃除の時間だったのだ。
「そうもいかないんだよ。あれからほぼ毎日欠かさず、駅のホームで見張っているけど、時間を変えたのか、なかなか現れなくて…」
「お前、まだそんなことやってたのか…」
藤堂くんが言っている意味がよく分からず、とりあえず受け流す。
『まだ』って、高校生になった時からずっとやってるんですけど。