偽王子と嘘少女
「メールは? アドレス渡しただろ」
面倒くさいように掃除用具入れからちりとりを出しながら、言う。
「そんなの、最初以来全くしてないよ。なんて送ればいいか分からないんだもん」
変に送って、嫌われたやだし。
「…本当は、夏祭り行きたいんだけどな」
「夏祭り?」
あ、また声に出てた。
「そうだよ。8月の最初の土曜日に、近所の川沿いで行われるでしょ…」
「ああ…そういえば、あったかもな」
「その祭りの最後に花火が打ち上げられて、それを一緒に見た人たちはずっと一緒にいられる、とかいう昔ながらの言い伝え的なのがあるの。あまり有名じゃないけどね」
その相手というは、友だちでも恋人でもOKらしい。
だからというのもあり、この地域に住むどこかの若者がSNSに投稿したことで、数年前からこのお祭りに人気が出ている。