偽王子と嘘少女


私は毎年行っているけど、紫水くんと行ったことは1度もない。


家族か、希子くらい。


別に悪いわけではないけれど、希子も私とばかりではなく、紫水くんと行ってみたいって思うんじゃないのかな。


私はあの花火を、紫水くんと希子と…皆で見たいんだ。


「それ…俺じゃなくて、芹澤に言ってみたら?」


言おうとしていた言葉を、藤堂くんに先に言われてしまった。


「初めて意見があったね」


微笑みながら、ほうきを閉まった。






家に帰り、希子に電話でさっきのことを尋ねてみた。


『え…夏祭り、橙里も誘うの!?』


「うん。そのつもりなんだけど、だめ…かな?」


『いや、だめ…じゃ、ないけどさ…』


見たことがないくらいに動揺している様子。


< 171 / 273 >

この作品をシェア

pagetop