偽王子と嘘少女
私は毎年行っているけど、紫水くんと行ったことは1度もない。
家族か、希子くらい。
別に悪いわけではないけれど、希子も私とばかりではなく、紫水くんと行ってみたいって思うんじゃないのかな。
私はあの花火を、紫水くんと希子と…皆で見たいんだ。
「それ…俺じゃなくて、芹澤に言ってみたら?」
言おうとしていた言葉を、藤堂くんに先に言われてしまった。
「初めて意見があったね」
微笑みながら、ほうきを閉まった。
家に帰り、希子に電話でさっきのことを尋ねてみた。
『え…夏祭り、橙里も誘うの!?』
「うん。そのつもりなんだけど、だめ…かな?」
『いや、だめ…じゃ、ないけどさ…』
見たことがないくらいに動揺している様子。