偽王子と嘘少女
「ど、どうしたの…真面目な顔して…」
私が聞くと、藤堂くんは一歩一歩と近づいてくる。
壁ドンは、さすがにもうないよね?
とは思うけれど、無意識に壁から遠ざかる私。
何をされるのかと恐怖を感じていると、藤堂くんは近すぎない距離で立ち止まった。
良かった、とほっとしているのもつかの間。
彼の次の言葉に、私は驚かされる。
「……なっ夏祭り、俺も行きたいっ…!」
「……っは?」
思いもよらないことを言われ、拍子抜けして手に持っていたちりとりを落としてしまう。
夏祭り行きたい、って私たちと、ってこと?
「な、な、な……な、んで!?」
いきなりのことで、脳がパニックだよ!