偽王子と嘘少女


…ではなく、その隣の『まるごといか焼き』!


夏祭りに来たらこれを食べるのが、毎年の恒例なのだ。


「お前…一応女子なのに、いきなりこんなんかよ」


あきれつつも財布を取り出す藤堂くん。


「しょうがないじゃん、美味しいんだもん」


本当は、紫水くんも来ると知って、我慢しようと思っていたけれど、藤堂くんの前ならそれも気にしなくて済む。


食べたいものは、今のうち食べておこう。


「ありがとね。藤堂くんがいてくれて本当に良かった!」


笑顔でいか焼きを受け取ると、彼はいつかのように顔を赤くして照れる。


「お、お礼なんか…い、いいらねぇからっ! こ、こんなの、お、男として…とっ、当然のこと、だから」


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