偽王子と嘘少女
「大丈夫、きっと大丈夫だよ」
キャラじゃない、本当の藤堂くん。
でも、何の根拠もないただの同情に、より怒りを覚える。
「藤堂くんに、私の気持ちなんて分からないよ…!」
紫水くんは、なんて答えるの…?
気になるのに、見たくない。
希子は大切な友だち。
紫水くんは大好きな人。
応援したいのに、してあげたいはずなのに。
…どうして、涙なんかっ。
そのとき、藤堂くんはゆっくりと優しく、私の体に腕を回した。
ぐっと、暖かくて大きな胸に引き寄せられる。
「泣け。これなら聞こえないから、思う存分に泣けばいい」
「………っ!」
なによ…。
高校デビューのくせに。
キャラのくせに。
俺様なんて、似合わないんだから…!
頭では否定しても、溢れ出る涙。
悔しかったけど、彼のその優しさにただ身を任せた。