偽王子と嘘少女
「俺が側にいる…ずっと、ずっといてやるから…! だからもう、あいつで苦しむな」
「……藤堂くん」
どんどん早くなる胸の鼓動が大きくて、頭がクラクラしてくる。
私も藤堂くんも、慣れてなくて、2人して固まってしまう。
だけど、ふと目にした紫水くんの姿で、我に返る。
「あっ。ごめん、行かなきゃ…」
無理やりほどいて、紫水くんのもとへ向かう。
「やっぱり、自分の心に嘘つくことなんて出来ない…!」
「………かぐや」
そのとき、藤堂くんが私を下の名前で呼んでいたことなんて、気付きもしなかった。