偽王子と嘘少女


忍side


行ってしまった。


あいつのもとへ。


結局、俺は臆病なままで、中途半端に困らせることしか出来なかった。


なんてひどいやつだろう。


柊の夢を、思いを、応援してあげることが出来ないなんて。


「どうしたの、藤堂くん。顔、死んでるよ」


代わりにやってきたのは、芹澤。


そういえば、交換するのは、こっちもだったか。


どうせ学校での自分が本心ではないとバレているなら、と素になる。


「君もやつれてるけど、大丈夫?」


涙と、赤面と。


その他もろもろが与えた影響がかなり強く、美人という分類に入るであろう彼女の大切な顔が、見るに耐えないことになっている。


思わず心配してしまうほどに。


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