偽王子と嘘少女
「なんかね、好きな人がいるんだって。私じゃ代わりにはなれない、って言われた」
結局、どんなに頑張っても、その子には勝てないんだよ…。
切ない表情で、必死に涙を堪えながら言う。
正直、こんなときどうすればいいか、分からない。
自分で言うのもなんだが、俺は高校生になって、少しはモテるようになった。
けれどもそれは、向こう側からの好意の一種であって、付き合うなんてことは一度もしたことがないのだから。
すると、俺の気持ちを察したのか否か、気も使える芹澤は、この少し重たい空気を変えてくれる。
「…あれ、かぐやのときみたいに、ぎゅーって、してくれないんだ?」
「って、は!?」
もしかして、見られてた!?
いや、この全てを見透かしている目は、嘘や冗談なんかという軽いものじゃない。
どう見ても、真実を知っている証拠だ。