偽王子と嘘少女


スプーンを氷の山に刺し、ゆっくりとすくう。


口へ運ぶだけなのに、指先、いや腕全体の震えが止まらない。


だって、私は今から、間接キスを…!!


「あ、そっか。そのスプーン、俺が使っちゃったから、使いづらいよね」


「…はっ! えっ!?」


不自然すぎる私の行動の意図に気付いたらしい、紫水くん。


「ち、ちが…そんなつもりじゃなくて」


憧れの人と間接でもキスすることが出来るのが、嬉しくて夢のようで舞い上がっている、なんて言ってしまったら、絶対にひかれるに決まっている。


一体、なんて言えば…!?


「じゃあ、口開けて」


「えっ!?」


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