偽王子と嘘少女
私は今から何をされるっていうの?
恐怖と不安と、その他もろもろの感情が渦巻く中、ちらっと紫水くんを見ると、いつものように、明るくまばゆい素敵な笑顔をしていた。
まあ、紫水くんになら、何されてもいっか。
変な気持ちが生まれ、不思議な魔法にかかったように、心を何かに支配されてしまった私は、言われた通りに口を開け、ついでになぜか目を閉じる。
「んっ…!?」
数秒が過ぎ、冷たいものが口全体に伝わる。
突然の刺激に目を開けると、紫水くんの手には、私の口内へ運ばれたと思われる、色違いのスプーン。
つまり、紫水くんが使ってたやつ!
「これでおあいこだね」
爽やかに笑う君に見惚れながらも、私はまた、今のスプーンを自分の口へ運ぶのだった。