偽王子と嘘少女
「具合が悪いって言うから、看病しに来たの。お腹痛いの? それとも頭?」
真ん中の大きなベンチ。
まるでわざと空けておいたかのように、端に座っている。
「ふっ…なにそれ。嘘だって分かってるくせに、やめてよ」
振り返らないで、ただまっすぐに花火を待つ希子。
私は何も言わず、隣に座った。
「…戻らないの?」
先に沈黙を崩したのは、希子だった。
「希子が戻るならね」
「ふーん」
橙里が好き、とあのとき私に教えてくれたのは間違いなく希子。
あんな形になってしまったけれど、正直に答えてくれて、嬉しかった。