偽王子と嘘少女
すると、藤堂くんは私の手を引いて、会場の方へ歩き出した。
「な、なんで!?」
「いつまでも逃げてちゃ、何も変わらない。あいつのことが本当に好きなら、ちゃんと向き合え」
そっか。
私はずっと逃げてたんだ……現実からも、紫水くんからも。
好きになってほしい。
その思いは変わらないはずなのに、自分から何も行動してこなかった。
私より先に紫水くんが好きだった希子のことも協力させて、なのに自分の幸せしか願わない。
こんな自分が、ずっと嫌だった。
たとえどんなに見た目を着飾っても、心は臆病なままなのに。
「じゃあ、行く…!」