偽王子と嘘少女


希子side


浴衣なんて着てくるんじゃなかった。


橙里を探しながら、なんだかブルーな気持ちになる。


走りづらいし、変に気合入れてるって思われそう…。


ていうか、橙里ってば本当どういうつもり!?


さっき、私に言ったよね?


付き合えない、って。


それって、好きじゃない、ってことじゃないの?


むー、と口を尖らせ、視線をきょろきょろ。


「あ!」


前方に、橙里の姿を発見。


正直、今は会いたくないけど、向こうが私を求めている以上、嫌々言って逃げるわけにはいかない。


< 211 / 273 >

この作品をシェア

pagetop