偽王子と嘘少女
希子side
浴衣なんて着てくるんじゃなかった。
橙里を探しながら、なんだかブルーな気持ちになる。
走りづらいし、変に気合入れてるって思われそう…。
ていうか、橙里ってば本当どういうつもり!?
さっき、私に言ったよね?
付き合えない、って。
それって、好きじゃない、ってことじゃないの?
むー、と口を尖らせ、視線をきょろきょろ。
「あ!」
前方に、橙里の姿を発見。
正直、今は会いたくないけど、向こうが私を求めている以上、嫌々言って逃げるわけにはいかない。