偽王子と嘘少女


とりあえず、鏡で涙の跡が残っていないか、念入りにチェックして、彼のもとへ。


「お待たせ、橙里」


「ん? …ああ、希子! 良かった、戻ってきてくれたんだね」


どうにかフられたことへの負の感情を出さないように、気をつける。


悟られてしまったら、せっかくの楽しい夏祭りが台無しだ。


「それで? 呼び出した理由は?」


「花火、一緒に見たいな…って」


「………っ!」


だめだよ…そんなこと、言ったら。


期待しちゃうじゃん。


「私じゃなくても、代わりならいっぱい…」


優柔不断な彼への不安からか、ついネガティブな言葉を並べてしまう。


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