偽王子と嘘少女
なのに、このままじゃ…
このままじゃいけない気がするんだ。
よく分からなくて、上手く表せないけど。
「ごめん、紫水くん…答えはあとでちゃんとするから」
「…うん」
遅くなるかもしれない。
たくさん待たせるかもしれない。
だけど、返事はいらないって言われても、自分の思いは真っ直ぐに伝えないと。
希子や紫水くんがそうしたように。
「じゃあ、また勉強しよっか」
何事もなかったかのように前の席に戻る紫水くん。
気付いてほしいことはちゃんと気付いて、触れないでほしいことはそっとしておいてくれる。
こんな彼の優しさが、私は好きだ。