偽王子と嘘少女


「じゃあ順番に返却するからなー」


その瞬間から、歓喜と悲哀の声で教室が埋め尽くされる。


先生も、このときばかりは騒がしくする私たちに目を瞑る。


きっと、大量の宿題が待っているのだから、その前の最後の足掻きもがきだと思っているのだろう。


「藤堂ー」


彼の名が呼ばれた。


それだけで、変に意識してしまう。


藤堂くんは何点だったのかな。


そんなことを考えているうちに、いつの間にか私の番。


「柊は宿題2倍決定だな」


その一言で、解答用紙を見る前になんとなく結果が分かってしまう。


ああ、やっぱり。


ペラっと紙をめくると、赤点の文字。

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