偽王子と嘘少女


「私には好きな人がいるの。だから…」


「じゃあなんであのとき、告白をOKしなかったんだよ」


「えっ」


なんでそのことを知っているんだろう。


すると、後ろから囁くような声が聞こえた。


「…あの日、ずっと見てた。お前が告白されるところも、その返事を後回しにするところも」


「………」


「なんで? なんで、断ったの…? あいつのこと、ずっと好きだったんだろ?」


余裕のない話し方。


きつくなる腕。


苦しい。


だけど優しい。


不器用で、ただまっすぐな愛。


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